ISOは打数あたりの「追加塁打」です
ISO(Isolated Power、純長打率)は、長打率から打率を引いた値です。安打1本で最低限得られる1塁分は打率がすでに数えているので、それを超えて進んだ塁(二塁打は1塁、三塁打は2塁、本塁打は3塁)だけを集めて打数で割るとISOになります。つまり、1打数あたり平均で何塁余分に進むか、長打力だけを切り出して示す指標です。
2026年のNPBで規定打席に達した打者45人のうち、ISOが最も高かったのは山口 航輝(ロッテ)です。打数412、安打114、二塁打18、三塁打1、本塁打38という成績から追加塁打は134(18 + 2 × 1 + 3 × 38)となり、412で割るとISO .325です。NPBのリーグ平均 .126の2.59倍にあたります。打率はほぼ同じ .277と .276でも、滝澤 夏央(西武)のISOは .035でした。
ISOを別に見る理由
打率と長打率は、安打を打つ力と長打を打つ力を1つの数字に混ぜています。ISOはそのうち長打の側だけを取り出すので、次のような場面で役に立ちます。
- 打率がほぼ同じ2人を分けたいとき: 2026年NPBの山口(ロッテ)は打率 .277、滝澤(西武)は .276とほぼ同じですが、ISOは .325と .035です。山口は安打114本のうち57本が長打、滝澤は110本のうち9本でした。ISOの順位は45人中1位と44位に開きます。
- 長打率が同じくらいで中身が違うとき: 宗 佑磨(オリックス)の長打率は .387、牧原 大成(ソフトバンク)は .385でほぼ並びますが、打率は .245と .300、ISOは .142と .086です。長打率は打率を含んでいるため、単打の多い打者も長打率が高く出ます。
- 打順や役割を考えるとき: 出塁が欲しい上位打線と、走者を返す長打が欲しい中軸を分けて考えるとき、打率 × ISOマップでどの区画にいるかが目安になります。
- 打率が低くても長打力があるかを見るとき: 2026年MLBでは村上 宗隆(ホワイトソックス)の打率は .207ですが、ISOは .271で規定打席135人中4位です。大谷 翔平(ドジャース)は打率 .275でISO .237、15位でした。ISOを使うと、打率に隠れた長打力が見えます。
- 長打力の変化を追うとき: 同じ打者のシーズンごとのISOを比べれば、打率の変化とは別に長打力の増減が分かります。ただしFanGraphsは、ISOで結論を出すには550打席ほどの標本を勧めています。
使い方
- 比較するリーグ(NPB・MLB・KBO)を選びます。リーグ平均とマップの点(2026年レギュラーシーズンの規定打席到達打者)がそのリーグに切り替わります。
- 打数・安打・二塁打・三塁打・本塁打を入力します。安打には長打を含む全安打を入れ、四死球や犠打・犠飛は打数に入らないので入力しません。空欄は0として計算します。NPB公式サイトやBaseball-Referenceの表にあるAB・H・2B・3B・HRの数字をそのまま移せば大丈夫です。
- 結果欄でISOとFanGraphsの評価、リーグ平均との差を確認し、ISOダイヤモンドの区間ごとの太さで、追加塁打が二塁打から来ているのか本塁打から来ているのかを見ます。
- 打率 × ISOマップで、打者タイプの区画と規定打席到達打者の中での位置、打率が近い打者のISOを確認します。点にマウスを重ねると選手名と成績が表示されます。
- 例ボタンで、リーグごとのISO1位・巧打型・長打型の打者を呼び出して比べられます。結果のコピーとリンクのコピーで、同じ計算をあとから開き直せます。
計算方法
- 追加塁打 = 二塁打 + 2 × 三塁打 + 3 × 本塁打。安打が最低限得る1塁分を除いた残りの塁です。
- ISO = 追加塁打 ÷ 打数。
- 同じ値は長打率 − 打率でも求められます。長打率 = 塁打 ÷ 打数、塁打 = 安打 + 追加塁打だからです。
- 結果は野球の記録と同じく小数第3位に四捨五入し、.325のように表示します。
計算機のISOダイヤモンドは、この式を図にしたものです。本塁から一塁までは安打すべてが通り、一塁から二塁は二塁打以上、二塁から三塁は三塁打以上、三塁から本塁は本塁打だけが通ります。各区間を通った数を打数で割ると下の表になり、後ろ3区間を足すとISO、4区間すべてを足すと長打率です。山口 航輝(ロッテ)の成績で計算すると次のとおりです。
| 区間 | 通った安打 | ÷ 打数 412 |
|---|---|---|
| 本塁 → 一塁 | 安打 114 | .277(打率) |
| 一塁 → 二塁 | 二塁打 18 + 三塁打 1 + 本塁打 38 = 57 | .138 |
| 二塁 → 三塁 | 三塁打 1 + 本塁打 38 = 39 | .095 |
| 三塁 → 本塁 | 本塁打 38 | .092 |
| ISO(後ろ3区間) | 57 + 39 + 38 = 134 | .325 |
| 長打率(4区間) | 114 + 134 = 248 | .602 |
リーグ平均と規定打席到達打者の分布(2026年レギュラーシーズン)
リーグ平均は、リーグ全チームの成績を合計して計算した値です。NPBのセ・リーグは2026年に投手が打席に立つため、セ・リーグ投手の打撃成績を除いて計算しました。
| リーグ・シーズン | 打率 | ISO | 長打率 |
|---|---|---|---|
| NPB 2026(12球団、セ・リーグ投手の打席を除く) | .244 | .126 | .369 |
| NPB 2026 セ・リーグ / パ・リーグ | .243 / .245 | .119 / .132 | .362 / .377 |
| MLB 2026(30球団) | .244 | .156 | .400 |
| MLB 2025 | .245 | .159 | .404 |
| KBO 2026(10球団) | .268 | .136 | .404 |
| KBO 2025 | .262 | .127 | .389 |
| リーグ | 規定打席 | 打者数 | ISO中央値 | ISO1位 | .200以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| NPB | 444打席 | 45人 | .124 | 山口 航輝(ロッテ) .325 | 10人 |
| MLB | 502打席 | 135人 | .168 | ピート・クロウ=アームストロング(カブス) .291 | 37人 |
| KBO | 446打席 | 49人 | .152 | Kim Do Yeong (KIA) .339 | 11人 |
KBOのリーグ平均ISOは2025年の .127から2026年は .136へ .009上がり、MLBは .159から .156へ小さく下がりました。KBOとMLBでは規定打席到達打者の中央値がリーグ平均より高く、1シーズン通して主力で出る打者は、おおむね長打力もリーグ平均より高いためです。NPBでは中央値 .124がリーグ平均 .126とほぼ並んでいます。
良いISOの目安
FanGraphsが示す目安表と、その基準で2026年の規定打席到達打者を分けた人数です。計算機の評価は、ISOが表の値以上になる最も高い段階です。たとえば .199は「平均以上」、.200は「優秀」で、.100未満はすべて「大不振」として数えます。
| 評価 | FanGraphsの値 | NPB 45人 | MLB 135人 | KBO 49人 |
|---|---|---|---|---|
| 非常に優秀 (Excellent) | .250 | 7 | 9 | 3 |
| 優秀 (Great) | .200 | 3 | 28 | 8 |
| 平均以上 (Above Average) | .170 | 7 | 30 | 7 |
| 平均 (Average) | .140 | 3 | 34 | 8 |
| 平均以下 (Below Average) | .120 | 5 | 17 | 3 |
| 不振 (Poor) | .100 | 8 | 8 | 5 |
| 大不振 (Awful) | .080 | 12 | 9 | 15 |
FanGraphsは、この表が目安であり、リーグ平均ISOは年によって変わると断っています(2010年の記事)。実際、2026年MLBのリーグ平均 .156は表の「平均」.140より高く、NPBの .126は低めです。表は大まかな物差しとして使い、同じシーズンのリーグ平均との差もあわせて見てください。NPBはISOが .120に届かない規定打席到達打者が20人(「不振」8人と「大不振」12人)で、長打より安打で出塁する主力打者が多いリーグです。
極端な例として、2001年のバリー・ボンズ(ジャイアンツ)は476打数で73本塁打を含む411塁打を記録し、ISOは .536でした。2026年MLB1位の .291の約1.8倍です。
打率が同じでも、長打率が同じでも、ISOは違います
打率がほぼ同じ2人、長打率がほぼ同じ2人を2026年の成績から選びました。マップでは、同じ縦線(打率)または同じ斜めの線(長打率)の上で、上下に大きく離れた点です。
| 打者 | 打率 | ISO | 長打率 | ISO順位 |
|---|---|---|---|---|
| 山口 航輝(ロッテ) | .277 | .325 | .602 | NPB 1位 |
| 滝澤 夏央(西武) | .276 | .035 | .312 | NPB 44位 |
| 宗 佑磨(オリックス) | .245 | .142 | .387 | NPB 20位 |
| 牧原 大成(ソフトバンク) | .300 | .086 | .385 | NPB 37位 |
| ピート・クロウ=アームストロング(カブス) | .280 | .291 | .570 | MLB 1位 |
| スティーブン・クワン(ガーディアンズ) | .282 | .067 | .349 | MLB 134位 |
宗と牧原は長打率がほぼ同じなので、長打率だけを見ると似た打者に見えます。しかし牧原の長打率 .385のうち .300は安打そのものから来ており、宗は安打が少ない代わりに、安打114本のうち34本が長打でした。長打力を比べるならISO、安打を打つ力を比べるなら打率を、それぞれ別に見るほうが正確です。
ISOと他の打撃指標
| 指標 | 計算 | 見るもの | ISOとの関係 |
|---|---|---|---|
| 打率 | 安打 ÷ 打数 | 安打を打つ頻度 | 長打率 − ISO |
| 長打率 | 塁打 ÷ 打数 | 安打と長打を塁数で数える | 打率 + ISO |
| OPS | 出塁率 + 長打率 | 出塁と長打をあわせて見る | 四死球が含まれる |
| wOBA | 結果ごとの得点価値を掛けた出塁率 | 出塁と長打の実際の価値 | ISOは塁数(1・2・3)で数えるだけで、得点価値で重み付けしない |
よくある間違い
- 本塁打に4を掛ける: 長打率を求めるときのように本塁打を4塁として数えると、本塁打の数 ÷ 打数の分だけISOが大きくなります。山口なら (134 + 38) ÷ 412 = .417となり、.325より .092大きくなります。
- 打席で割る: 四死球や犠打・犠飛を含む打席で割ると、ISOは小さくなります。山口の447打席で割ると .300で、打数で割った .325とは違います。
- 安打に単打だけを入れる: ISOは追加塁打 ÷ 打数なので安打の数とは無関係に変わりませんが、打率と長打率が正しく出ません。安打には二塁打・三塁打・本塁打を含む全安打を入れてください。
- 四捨五入した打率・長打率で引く: 小数第3位に丸めた2つの値を引くと .001ずれることがあります。計算機の式の行で2つの方法の結果が違うときは「≈」で示します。
- 短い期間の成績で判断する: FanGraphsは、シーズン開始2週間でISO .550を記録しても、そのまま続くと期待するのは早いと説明しています。結論は550打席ほどたまってから出してください。
- 別のリーグ・シーズンのISOをそのまま比べる: 2026年のリーグ平均だけでもNPB .126、MLB .156、KBO .136と違います。リーグ平均との差や倍率で比べてください。
限界
- ISOは球場とリーグの環境を補正しません。投手に有利な球場で記録した同じISOのほうが、価値は高くなります。
- 二塁打と本塁打の得点価値をwOBAのように別々に評価せず、走者・アウト・点差といった状況も考慮しません。
- 四死球、三振、走塁はISOに含まれません。打者の総合評価は、出塁率・wOBA・OPS+とあわせて見てください。
- 評価はMLBを基準にしたFanGraphsの目安表です。NPBやKBOでは、リーグ平均と規定打席到達打者の中での順位を先に見てください。
- 「次の段階まで」の行は、次の打数ごとに本塁打を打つと仮定した最小の本数であり、今後の成績を予測した値ではありません。
- NPB 2026のリーグ合計は、公式サイト(npb.jp)に接続できなかったため、スポーツナビ(Yahoo! JAPAN)のチーム別選手成績と、シーズン途中に移籍した選手の成績を合算して再構成しました。投手成績の合計と比べると31打席・6安打少なく、本塁打は同じです。NPB 2025年の平均は、セ・リーグの投手打撃の合計が得られなかったため載せていません。
基準日 式と目安表は2026-10-23にFanGraphs LibraryとMLB公式用語集の原文で確認し、リーグ合計と規定打席到達打者は2026-10-22に取得したKBO公式記録・MLB公式統計(Stats API)・NPB記録の2026年レギュラーシーズン最終成績から計算しました。
出典
- 01FanGraphs Library — ISOISO = SLG − AVG = (2B + 2×3B + 3×HR) ÷ AB、目安表(.250 Excellent 〜 .080 Awful)、550打席を推奨、球場・リーグは補正しない
- 02MLB Glossary — Isolated Power (ISO)長打だけを数えて打者の長打力を見る指標、(1×2B + 2×3B + 3×HR) ÷ 打数、または長打率 − 打率
- 03KBO official records (Korean) — team hitting2025・2026年レギュラーシーズン10球団の打数・安打・二塁打・三塁打・本塁打の合計
- 04KBO official records (Korean) — player hitting2026年レギュラーシーズン、規定打席(446打席)以上の49人
- 05MLB Stats API — チーム打撃成績2025・2026年レギュラーシーズン30球団の合計
- 06MLB Stats API — 2026年規定打席の打者規定打席(502打席)以上の135人
- 07NPB — 2026年セ・リーグ規定打席の打者(保存版)パ・リーグの表(bat_p)とあわせて規定打席45人、2026-10-08の保存版
- 08スポーツナビ(Yahoo! JAPAN) — NPBチーム別打撃成績2026年NPB12球団の選手成績の合計でリーグ合計を再構成
- 09MLB Stats API — バリー・ボンズ 年度別打撃成績2001年 打数476・安打156・二塁打32・三塁打2・本塁打73・塁打411
よくある質問
ISOの算出方法は?
ISO = 長打率 − 打率 = (二塁打 + 2 × 三塁打 + 3 × 本塁打) ÷ 打数です(FanGraphs・MLB公式用語集)。2026年NPBの山口 航輝(ロッテ)は打数412、二塁打18、三塁打1、本塁打38なので、(18 + 2 + 114) ÷ 412 = 134 ÷ 412 = .325になります。
ISOとは何ですか?
Isolated Powerの略で、日本語では純長打率と呼ばれます。安打ごとに最低限得られる1塁分を除き、それを超えて進んだ塁(二塁打は1、三塁打は2、本塁打は3)だけを数えて打数で割った値です。1打数あたり平均で何塁余分に進むか、つまり長打力だけを示します。
良いISOはいくつですか?
FanGraphsの目安表は、非常に優秀 .250、優秀 .200、平均以上 .170、平均 .140、平均以下 .120、不振 .100、大不振 .080です。ただし2010年の記事の目安なので、同じシーズンのリーグ平均とあわせて見てください。2026年レギュラーシーズンのリーグ平均はMLB .156、KBO .136、NPB .126(セ・リーグ投手の打席を除く)です。
長打率とISOはどう違いますか?
長打率 = 打率 + ISOです。長打率は単打も1塁ずつ数えるため、打率が高ければ長打が少なくても高く出ます。2026年NPBの宗 佑磨(オリックス)と牧原 大成(ソフトバンク)は長打率が .387と .385でほぼ並びますが、ISOは .142と .086で大きく違います。
打率と長打率だけでISOは求められますか?
はい、長打率から打率を引けば求まります。ただし記録サイトの打率・長打率は小数第3位に丸めた値なので、引くと .001ずれることがあります。正確な値は、打数と二塁打・三塁打・本塁打の数から計算してください。
本塁打に4ではなく3を掛けるのはなぜですか?
長打率は本塁打を4塁として数えますが、そのうち1塁は安打として打率にすでに含まれています。ISOはその1塁を除いた残りだけを数えるので、二塁打は1、三塁打は2、本塁打は3を掛けます。
NPBのリーグ平均ISOはいくつですか?
2026年レギュラーシーズンのNPB12球団の合計(セ・リーグ投手の打席を除く)で計算すると .126(打数55,769、追加塁打7,002)で、セ・リーグ .119、パ・リーグ .132です。規定打席到達打者45人の中央値は .124で、.200以上は10人です。2025年のNPB平均は載せていません。
ISOが高ければ良い打者ですか?
ISOは長打力だけを見る指標です。四死球で出塁する力、三振、走塁、守備は含まれず、長打の種類ごとの得点価値もwOBAのようには評価しません。打者全体を評価するときは、出塁率・wOBA・OPS+とあわせて見てください。