PDFにパスワードを設定する: 2回入力してロックし、開き直して確認してから保存します
PDFのパスワード設定とは、開くときにパスワードを求めるよう、PDFの内容を暗号化する作業です。このツールはさらに、開いた人が印刷・文字のコピー・内容の編集・コメントやフォームへの入力をできないようにする制限も同時に設定できます。暗号方式はAES-256で、PDF 2.0の仕様に定められた方式(セキュリティハンドラのリビジョン6)を使います。
ロックしたあとは、できあがったファイルをすぐに開き直します。パスワードなしで開くとパスワードを求められること、そのパスワードで開くと全ページが開くことを確認できてはじめて、[PDFを保存]ボタンが押せるようになります。たとえば[サンプルPDFをロックしてみる]を押すと、2ページの架空の給与明細をランダムな16文字のパスワードでロックし、ロックしたファイルから描き直した1ページ目を[パスワードあり]に表示します。選んだPDFとパスワードはサーバーに送信せず、いま使っているブラウザの中だけで処理します。
PDFにパスワードを設定する場面
- 給与明細や源泉徴収票をメールで送るとき: 給与明細PDFや源泉徴収票、在職証明書には氏名・金額などの個人情報が入ります。宛先を間違えたり、受信者のメールボックスが他人に見られたりしても、パスワードがなければ内容がすぐには見えません。
- ノートパソコンやUSBメモリに残しておくとき: 紛失や盗難にあっても、パスワードを知らない人にはファイルの中身が読めません。
- 契約書や見積書のドラフトを、渡したい相手だけに見せたいとき: チャットや共有フォルダに置いたファイルは、思った以上に多くの人に広がります。パスワードを別に伝えた人だけが開けます。
- 配布資料の印刷やコピーを防ぎたいとき: 誰が読んでもよい講義資料や案内文でも、そのまま印刷して配られたり、文章を丸ごとコピーされたりするのは避けたい場合は、[誰でも開ける · 制限のみ]を使います。この方式がどこまで守られるかは、下の「開くパスワードと制限は別のものです」で説明します。
- クラウドに長く置いておくとき: クラウドのアカウントが乗っ取られたり、共有リンクが漏れたりしても、パスワードなしでは中身が読めません。
使い方
- PDFを作業エリアにドロップするか、[PDFを選ぶ]を押します。はじめてなら、[サンプルPDFをロックしてみる]で全体の流れを先に見られます。
- 開く人を選びます。初期値は[パスワードを入力して開く]です。
- パスワードを2つの欄に同じように入力します。思いつかなければ[ランダムに作成]を押し、できた値は[コピー]して別の場所に保管します。入力するときはIMEをオフにして、半角で入れてください。
- 開いたあとに制限したいことがあれば押します。押した項目は「制限」に変わります。
- [パスワードを設定]を押します。確認の行にチェックが付いたら、保存するファイル名を直して[PDFを保存]を押します。元のファイルは変更されません。
開くパスワードと制限は別のものです
PDFのパスワードには2種類あります。開くパスワード(ユーザーパスワード)は内容を復号するための鍵なので、知らない人はどんなソフトでも内容を読めません。制限はPDFの中に書き込まれるアクセス権で、閲覧ソフトがこの表示を見て、印刷やコピーのボタンを無効にする仕組みです。権限を変更するためのパスワード(オーナーパスワード)は、このツールが256ビットのランダムな値で作り、どこにも表示しません。そのため、できあがったファイルで制限を外せる人はいません。制限を変えたいときは、元のファイルからもう一度ロックしてください。
| 設定 | パスワードを知らない人 | 制限が守られる場所 |
|---|---|---|
| パスワードを入力して開く | 内容を開けません | パスワードを知る人が開いたあと、アクセス権の表示に従うソフトで |
| 誰でも開ける · 制限のみ | 内容を見られます | アクセス権の表示に従うソフトでのみ。従わないソフトでは、すぐに印刷・コピーできます |
qpdfのマニュアルには、2つのパスワードのどちらかを空にすると、そのPDFはパスワードなしで開けると書かれています。[誰でも開ける · 制限のみ]は、まさに開くパスワードを空にした場合です。そして、制限に従うかどうかはソフトによって違います。たとえばFirefoxのPDFビューアに使われているpdf.jsは、アクセス権の表示に従う設定(enablePermissions)が初期値でオフです。したがって、制限は「うっかり印刷したり丸ごとコピーしたりすることを減らす仕掛け」と考え、内容そのものを守りたいときは開くパスワードを設定してください。
- 印刷: 印刷を制限します。表22のビット3と、高品質印刷のビット12をあわせてオフにします。
- 文字・画像のコピー: 文字や画像を選んでコピーすることを制限します。画面読み上げソフトが文字を読むための権限(ビット10)は、PDF 2.0の方式では制限しません。
- 内容の編集・ページ操作: 内容の編集と、ページの挿入・回転・削除を制限します(ビット4と11)。
- コメント・フォーム入力: コメントの追加とフォーム欄への入力を制限します(ビット6と9)。相手に記入して返送してもらう申請書などでは、この項目は許可のままにしてください。
組み合わせ数のはしごの読み方
AES-256そのものを破る方法は知られていないので、PDFのパスワードを破る現実的な方法は、パスワードを1つずつ試すことです。そしてファイルを手に入れた人は、ログイン画面と違って回数制限なしに何度でも試せます。そのため、パスワードの強さは「試すべき組み合わせの数」で考えるのが妥当です。
はしごには、いまのパスワードと同じ長さ・同じ文字種で作れる組み合わせ数が表示されます。文字種は、英小文字26通り、英大文字26通り、数字10通り、記号とスペース33通り、Korean Hangul syllablesの11,172通りで数え、それ以外の文字は1つの区分につき1,000通りとして見積もります。この数は文字をランダムに選んだ場合の大きさです。単語・名前・誕生日のように人が選んだパスワードは、実際にはずっと早く推測されます。数字だけ、同じ文字の繰り返し、キーボードで隣り合う文字の連続があると、はしごの下にその理由が表示されます。
| パスワードの形 | 組み合わせ数 |
|---|---|
| 数字4桁 | 10,000 |
| 生年月日6桁(YYMMDD、100年分) | 36,525 |
| 英小文字8字 | 約2.1 × 10¹¹ |
| 英小文字と数字8字 | 約2.8 × 10¹² |
| Korean Hangul syllables 4字(ランダムの場合) | 約1.6 × 10¹⁶ |
| 英大文字・英小文字・数字10字 | 約8.4 × 10¹⁷ |
| このツールが作るランダム16字 | 約1.2 × 10²⁴ |
はしごの点線は10¹⁰です。パスワード強度の推定ツールzxcvbnは、推測回数が10¹⁰以上なら「オフラインの低速ハッシュの状況でも強く保護される」と分類しています。ランダムに選んだパスワードは、平均して組み合わせ数の半分ほど試すと当たるので、少なくともこの線を十分に超えるようにしてください。生年月日は、年月日・日月年・月日年のどの並びでも6桁なら36,525通り、8桁(西暦)でも73,049通り(1900〜2099年)にしかなりません。[ランダムに作成]は、紛らわしいl・o・0・1を除いた32種類の文字で16字を作るので、ちょうど32¹⁶通りになり、4文字ずつ区切って表示するため、スマートフォンでも書き写しやすくなっています。
暗号で隠れるものと、それでも見えるもの
PDFの規格(ISO 32000-1 7.6.1)は、文字列とストリームだけを暗号化し、整数や論理値などの値は文書の構造を示す情報なので暗号化しないと定めています。そのまま保存すると、ページ数やページサイズのように数値で書かれた構造情報が、パスワードなしでも読めてしまいます。このツールは、ページと文書情報を入れたオブジェクトを、暗号化されるオブジェクトのまとまり(object stream)の中に移して保存するので、ページサイズとページ一覧もパスワードなしでは見えません。ロックのあとは、実際にそう保存されたかをファイルを開き直して確認し、隠せていなかった項目は「それでも見えるもの」に移して表示します。
それでも残るものがあります。ストリームは中身だけが暗号化され、長さや種類を書いた先頭部分はそのまま残るため、ページごとに内容ストリームが1つずつある一般的なPDFでは、その数からページ数を推測できます。ファイル名とファイルサイズは暗号とは無関係に見えますし、画像と添付ファイルは、中身が暗号化されても、その先頭に書かれた縦横のピクセル数とサイズが残ります。サンプルの給与明細なら、1ページ目の上にある会社マークの画像が600 × 200ピクセルであることは、パスワードなしでもわかります。ファイル名に氏名や機微な業務名が入っているときは、[保存するファイル名]で変えてから保存してください。
パスワードを設定して送るとき
- ファイルとパスワードは別の経路で: ファイルはメールに添付し、パスワードはチャットや電話で伝えるように分けます。同じメールの本文にパスワードを書くと、メール1通が漏れただけで両方が渡ってしまいます。
- 受け取る人のソフト: qpdfのマニュアルによると、256ビットの方式はPDF 2.0規格のAES方式で、PDF 1.7の拡張レベル8以上を必要とします。古いPDFソフトや一部のチャットのプレビューでは、このようなファイルを開けないことがあるので、ダウンロードして最新のPDFビューアやブラウザで開くよう案内してください。
- 制限を設定したとき: 相手に署名やフォーム記入をして返送してもらう書類なら、[コメント・フォーム入力]は許可のままにしてください。
- 複数の書類なら、先にまとめる: 複数のPDFを1つにまとめたり、必要なページだけを残したりする作業は、パスワードを設定する前に済ませてください。このツールも他のPDFツールも、すでにロックされたPDFは受け付けないので、最後にロックする順番が正解です。
よくある間違い
- 元のファイルを送ってしまう: 元のファイルはそのまま残り、名前の末尾に-protectedが付いた新しいファイルができます。添付する前にファイル名を確認してください。
- パスワードを同じメールに書く: メールを誤送信すると、ファイルとパスワードが一緒に渡ります。
- 制限だけ設定して安心する: 開くパスワードがないと、制限に従わないソフトではすぐに印刷・コピーできます。
- 生年月日や電話番号をそのまま使う: 生年月日6桁は36,525通りしかなく、相手を知っている人はさらに早く当てます。
- IMEがオンのまま、全角で入力する: 英数字のパスワードを全角で入れると、見た目は同じでも別の文字になります。このツールは全角英数字や半角カナを受け付けませんが、受け取る人がIMEをオンにしたまま入力すると、同じ間違いで開けません。入力するときはIMEをオフ(半角英数)にしてください。
- ロックしたあとに設定を変えてそのまま保存しようとする: ロックしたあとでパスワードや制限を変えると、結果がいまの設定と食い違うので、保存ボタンが押せなくなります。[変更した設定で再ロック]を押してください。
限界と注意
- 忘れたパスワードは取り戻せません。このツールはパスワードを保存せず、パスワードを解除する機能もありません。
- 制限は、閲覧ソフトが守ってくれる場合にだけ効果があります。画面のキャプチャや写真撮影は、どんな設定でも防げません。
- すでにパスワードや制限が設定されたPDF、電子署名のあるPDF、XFAフォームのPDFは受け付けません。
- 暗号化は黒塗りの代わりにはなりません。パスワードを知る人にも見せてはいけない内容は、ロックする前に文書から消してください。
- PDFは一度に1個、100 MBまで受け付けます。端末のメモリが足りないと、それより小さいファイルでも止まることがあります。このツールはChromeで動作を確認しました。
基準日 規格・マニュアルなどの出典は2026-10-21に確認しました。
出典
- 01ISO 32000-1:2008 Document management — Portable document format(Adobe公開コピー)7.6.1 暗号化の範囲(文字列とストリームのみ、整数・論理値は対象外)、表22 ユーザーアクセス権のビット(印刷・編集・コピー・注釈・フォーム・ページ組み立て・高品質印刷)
- 02qpdf マニュアル — Running qpdf(暗号化オプション)--bits=256はPDF 2.0のAES方式・PDF 1.7拡張レベル8、--print・--extract・--annotate・--form・--assemble・--modify-other、パスワードの片方を空にするとパスワードなしで開ける。このツールはqpdf 12.2.0をブラウザ向けにビルドした版でロックする(Apache-2.0ライセンス)
- 03pdf.js 3.11.174 — web/app_options.jsenablePermissionsの初期値はfalse(アクセス権の表示に従わない)。プレビューとロック後の開き直しもこのエンジンで行う(Apache-2.0ライセンス)
- 04zxcvbn README — スコアの基準推測回数10¹⁰以上 = 'strong protection from offline slow-hash scenario'
よくある質問
PDFとパスワードはサーバーにアップロードされますか?
いいえ。選んだPDFと入力したパスワードは、いま使っているブラウザの中だけで処理します。ページを開くのに必要なツールのファイルをダウンロードするだけで、PDFの内容やパスワードはどこにも送信しません。ページを閉じると作業内容も消えます。
パスワードを忘れたら解除できますか?
できません。このツールはパスワードを保存せず、AES-256でロックした内容はパスワードなしでは元に戻せません。ロックする前にパスワードの保管場所を決め、パスワードを設定していない元のファイルも別に保管してください。元のファイルがあれば、新しいパスワードでもう一度ロックできます。
誰でも開けるようにして、印刷やコピーだけを制限できますか?
できます。開く人を[誰でも開ける · 制限のみ]に変えて、制限することを選んでください。ただし開くパスワードがないと、内容は実質的に暗号化されていないのと同じで、制限に従わないソフトではすぐに印刷・コピーできます。FirefoxのPDFビューア(pdf.js)は、初期設定でこの制限に従いません。
生年月日6桁をパスワードにしてもいいですか?
6文字以上なので設定はできます。ただしYYMMDDの形の日付は、100年分を数えても36,525通りで、ファイルを持つ人が順に試せばすぐに開かれます。年月日・日月年・月日年のどの並びでも同じです。会社で生年月日を使うと決めている場合はその規則に従い、機微な書類なら、ランダムに作った16文字のような長いパスワードを使い、パスワードはファイルとは別の経路で伝えてください。
日本語のパスワードも使えますか?
使えます。6文字以上で、UTF-8で127バイトまでが条件で、日本語は1文字3バイトです。ただし全角英数字や半角カナなど、NFKCという正規化で別の文字に置き換わる文字は使えません。IMEがオンのままだと全角で入ってしまうので、英数字のパスワードはIMEをオフにして半角で入力し、受け取る人にも同じように入力してもらってください。複数人に送るファイルは、英小文字と数字のパスワードが扱いやすいです。
すでにパスワードが設定されたPDFのパスワードを変えられますか?
このツールは、すでにパスワードや制限が設定されたPDFを受け付けません。パスワードがわかっているPDFなら、先にそのファイルを作ったソフトなどで既存のパスワードを解除してから、ここで新しいパスワードをかけ直してください。すでに送った写しのパスワードは変わりません。
電子署名のあるPDFはなぜロックできませんか?
パスワードを設定するとPDFを新しく保存することになりますが、電子署名は署名した時点のファイルのバイト列を確認する方式なので、保存し直すと署名が無効になります。そのため、署名値のあるPDFは受け付けず、まだ署名していない空の署名欄だけのPDFは受け付けます。パスワードと署名の両方が必要なときは、署名ソフトでセキュリティ設定と署名の順番をあわせて決めてください。
受け取った人が「PDFが開けない」と言っています。
受け取る人のソフトが、AES-256(PDF 2.0方式)の暗号を読める必要があります。チャットのプレビューではなく、ファイルをダウンロードして最新のPDFビューアやブラウザで開くよう案内し、パスワードの大文字小文字と、全角・半角の違い、前後のスペースがないかを確認してもらってください。このツールは、ロックしたファイルをそのパスワードで開き直してページ数まで確認できた場合にだけ、保存ボタンを有効にします。